Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    “ちょっとした“お出掛け”?”B

            〜たとえば こんな明日はいかが? 参照?
 



          




  「向こうのルイは、相変わらずのショタコンだったぞ。」


 おいおい、のっけから過激なことを言うでない。
(苦笑) こういうお話のお約束と言われればそれまでで、身も蓋もないのだけれど。微妙に別な世界の存在同士、2組の葉柱さんと妖一くんとが、今まさに合流しようとしていたその矢先。またもや…すってんころりと転げた彼らは、気がつけば元居たアメフトの部室に戻っており、
『向こうの俺らは無事なんだろか。』
『階段から落ちたくらいじゃ堪
こたえねぇって。』
 俺なら身軽だろうし、ルイなら頑丈だしよと。全然根拠がないぞ、その言いよう…というよな、せいぜいいい加減な太鼓判を押してから、冒頭の過激な一言をのたまった坊やであり。
「…お前ね。」
 やっぱり“すってころりん”と、そちらさんは結構な革張りのソファーから転げ落ちた坊やを受け止めてくれた、どこか社会人風だったという“向こうの葉柱”は。最初はやっぱりビックリしていたけれど。これってもしかしたら“タイムスリップ”じゃなかろうかと、だってルイってば凄げぇ老けてるし、こんな形のデジタル・○ォークマンなんてないものと。坊やがスラスラと言い立てたらね? 案外と素早く事情を飲み込んでくれたのが頼もしくって。凄げぇ渋くなってて、がっつり逞しいまんまの上背へ、ワイシャツの着崩し方とかが絶妙でカッコよくってサ。甘いものはダメだったよなとか、そりゃあ気の利く構い方ばっかしてくれたのは大人だったけど。向かい合って話してる最中とかに、ついついだろう、大っきな手を伸ばして来ると頬っぺや頭を撫でては“ああ、ごめんごめん”て慌てて謝ってばかりいた…なんて言ってのけ。結局は こき下ろしかいと渋面を作って見せつつ、
「…相変わらずってのは何だよ。」
 葉柱が引っ掛かったところを訊き直せば。いつもの小さなタッパに戻った
(?)金髪の小悪魔くん、お兄さんのお膝へいつもの馬乗りで跨がったまま、それはしゃあしゃあとこう言い返して来た。
「だってルイって、今だって立派にショタコンじゃんか。」
 いくら俺がいるからったって、選りどり見どりな環境だろうにカノジョの一人も作らねぇでよと、挑発気味に囃し立てるような言いようをしてはいるものの。それでは困るとか嫌だとかいうような、悪しざまに罵るような気配がないのは…そうであることへ安心し切っているように聞こえもし。そうと思えば、そういう悪態がいちいち出るのもまた、意味合いこそ逆ではあるが、気になったこと、隠していられぬ正直さの現れなのかも知れないなと感じたところは。今日はちょっぴり、余裕のある総長さんであったりし。
“そういうのは“ショタ”とかいうのじゃあないんだろうによ。”
 どうにも女には関心が沸かない“ゲイ”なのではなく、ただ…今現在の恋人や、好きで堪らない相手が、たまたま同性だってだけなのと同じ理屈。坊やが逢ってた奴ってのが、もしも今の自分の延長の“自分”であったなら。どんなに利発で向こうっ気が強くても、ちょほ〜んっという効果音がどこからか聞こえて来そうなほど小さな坊やを見ていて、きっと無性に懐かしくなったんじゃあなかろうか。
“高校生のお前ってば、とんでもなく頼もしそうな兄ちゃんだったからなぁ。”
 愛らしさが上手に移行して、綺麗な外見に育っていたのは まま良いとして。
(おいおい)体格が増したのに比例して、思惑の深さとやらもその容量をずんと増して、すっかりと大人びていた彼だったから。年の差なんて物ともせず、大人相手に対等に振る舞っても違和感がないほど、威風堂々、立派な存在に育っており、
“どこで間違えたら、この幼くて可愛らしい子があんな風にって、少しくらいは思ったんじゃなかろうか。”
 こらこら。
(苦笑) でもまあ、小学生で既にこんだけ過激な子なのだ。高校生という器へと順当に育てば、中身の充実度だって増すというもの。それに、このちみっ子の方の妖一くんが“とっても大人だった”と感心しているほど、葉柱自身だって成長していたというのだから。それもあっての落差というものが大きくて、それで…坊やの小ささに懐かしさも一入ひとしおという感慨が沸いたのではなかろうか。

  “…ってことは。”

 自分が逢っていた方の、高校生の妖一くんは、果たしてどんな感想を自分のルイさんに語っているやら。そうそうあんな感じの兄ちゃんだったよなって思い出せたぜとか、一端な言い回しで報告しているのだろうなと思えば、向こうの葉柱もまた苦笑しているに違いなく…と、そこまでもが予想され。
「にしても、本人同士が逢えなかったってのはちょっと残念だったかな。」
 と言っても、もう一人の自分に逢いたかった訳じゃなく。きっとお互いにつんとそっぽを向き合ったに違いない、二人の“妖一”のご対面には是非とも立ち会いたかったなと口にすれば、
「ああ、でもそれは仕方がないんだって。」
 戻って来たぜの部室の中ほど。テーブル代わりの机の上へ、先客として載ってた雑多なガラクタたちを斟酌なしに床へと掻き落としてからちょこりと腰掛け、ヨウイチ坊やが言うことにゃ。全く同一の存在・個体が、同一時間軸上の三次元空間に“同時に存在する”のは不可能。次界自体の何らかの働きが起きてどうしても直接は接することが出来ないような“すれ違い”が生じて回避される。何でそうなるのかというと、あるべき座標に双方ともに居ようとした結果、同一固体だからと引き合うことでの核融合反応が起きて、悪くすればその時間軸そのものが崩壊しかねないため。次界に意志がある訳ではないながら、そもそもあり得ない現象であるが故の歪みの作用により、巡り合わせとは逆の、反発し合う“偶然”がこれでもかと重なり、そんな運びになる…とするのが、時間旅行関係のお話でオーソドックスに用いられている“推論”だったりするらしい。それを説明した妖一くん、
「なあルイ。」
「んん?」
「あっちの奴があんまり焦ってなかったのはサ。あいつらもこの年ん時に、同じように未来に行った身だったからなんじゃねぇのかな。」
「? そうかな?」
「だって、同じ時間軸だったから本人にだけは逢えなかったってんなら、コケた瞬間の俺たちが向かう先の“未来”の俺たちだったってことじゃんよ。」
「???」
「だー、もうっ! だからだなっ!」

 ややこしいSFの理屈も、出会った彼らが何者だったのかも、実のところはあんまり関係ない。覚えておかなきゃだなんてこれっぽっちも思ってないし、きっと向こうだって笑い話として、今だけ思い出してる程度だろうし。
“ルイなんて、思い出しはしても相変わらずに理解不能でいるのかもだしな。”
 それでまたまた妖一くんが、SFの理屈の説明をさせられてたり? 既に決まってる未来なんて要らない。さっきお邪魔したところも、今また行けたら今度はまた別の“自分たち”がいるに違いなく。刹那の先の選択肢は無限で、その数だけ、未来はいかようにも存在するし。かといって…さっきお邪魔した“未来”も、今の今、別な選択をしたからとて、二度と逢えなくなっただけ、消えたりはしない“現実
リアル”の一つ。

  「??? だってよ、ああならないようにって意識すりゃあ…。」
  「うん。俺らは全然別な将来ってのに行き着くことんなる。
   でもそれは、こっちが時間軸を乗り換えるだけの話であって、
   あいつらはあいつらで、今更消される訳じゃあない。」
  「???」

 ちょぉっと複雑な理屈でしょうか? 10年後の自分たちが居たあの世界。ある意味で“未来”だった世界だけれど、場所的にはすぐお隣りにあったからこそ、直接滑り込めたのに違いなく。同時進行にてどんどんと遠ざかってる…と、そういう説もあるんだそうで。ただ、そうなると向こうのあなたたちには“タイムスリップした記憶”はない、ということになりますけれどもね。(苦笑)

  「まあ…覚えていようがいなかろうが、
   全くガラリとまで変わるのなんてこたぁ無理だろうしな。」
  「そっかなぁ。」
  「あんまり強情に変われ変われって意識してたら、
   俺らの周囲だけに留まらない、
   歴史ごと塗り変わっちまうような大事を呼んじまうかも知んねぇぞ?」
  「それは…困るな。」

 大仰なことを持ち出すと、グルグルと考え込むのを何とか思い留まってくれたらしいのへ、思わずのことホッとする。だってそんな、変わらなきゃなんて意識をされたら、
“あの、カッコよかったルイに、全く全然逢えなくなっちまうじゃんよ。”
 こらこら、そういう魂胆か。
(苦笑) 何処までがホントか、それとも実は…お揃いの白昼夢かも? あれが本当に来るべき明日か、信じるかどうかは本人の決めること。そんな先の話より、

  「ともかく、だ。それを着ての外出は厳禁だかんな。」
  「
(チッ、覚えてやがったか。)何でだよ。
   メグさんならいざ知らず、俺みたいなガキなら問題ねぇじゃんか。」
  「ダメったらダメだっ。」
  「そんなまで頑固者だったから、
   さっきみたいな不思議現象にあった途端に、
   そりゃああっさりとパニクっちまったんじゃねぇのかよっ。」
  「あんなこと、そうそう滅多に体験しねぇことなんだから、
   きっちり対応出来なくたっても、俺は一向に構わねぇんだよっ。」

 そろそろ放課後になるのだろう、廊下をやって来る部員たちの談笑の声も聞こえて来ており。されど、ここの通りに入りかかって。その先へと進んでも良いのかねぇという、苦笑がちらほら。
「まぁた、やってるよ。」
「今日は何が原因なんかね。」
「もちっと収まるまで待つか?」
 秋大会はすぐにも始まるのでしょうに、良いのか、そんな…どっから見ても痴話喧嘩にしか見えないような、じゃれっこばっか していてサ。
(苦笑) 喧嘩が過熱するあまり、またぞろ“すってん”と転んでしまわないようにしてね、お二人さん♪







  〜Fine〜  05.9.06.〜9.07.


  *既出『たとえば こんな明日はいかが?』の二人との遭遇をさせてみました。
   これもまたベッタベタなよくあるシチュエーションではございますが、
   ウチのお二人さんだとどうなるのかなと思いまして、はい。
   (終盤はSFの理屈の羅列三昧になってしまってて すんまそんです。)
   きっと蛭魔くんは順応性が高いんだろうな。
   だって現にこうなってんじゃねぇかとか言って。
   それもまた“現実主義者”だってことでしょうかしらね。
(う〜ん)
   先のお話では総長さんからの視点がメインでしたので、
   今度は高校生の妖一くんに沢山出ばっていただきましたけど、
   あまりに小さなヨウイチくんを前にして、大人のルイさんがどんな顔したか。
   そっちにもちょっとは興味がございますですvv

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